春 〜Hikaru & Yuna〜

食べ終わる頃には愛菜はまだ寝ていて、ベビーベッドにいた。



光は食器洗いをしてくれた。



やることがなくなってしまった光は1人で寝室へ戻ってしまった。



寝るのかな。



それから1時間くらい喋っていただろうか。



千紗が出かけようと提案した。



でもこの中に車を運転できる人はいないし、愛菜をどうしようか考えると簡単には頷けなかった。



「愛菜ちゃんは光くんにお願いして、ちょっとだけ外歩こうよ。
買い物もできてないんでしょ?」
「たまには外の空気吸わなきゃ」



『うん…光に聞いて来るね』



寝ているのかと思ってそっと寝室のドアを開けると、ベッドに寝転がってスマホをいじる光がいた。



「ん?どうした?」



『あのね、ちょっと出かけたいんだけど、、愛菜お願いしても平気?』



「どこ行くの?」



『この前オープンしたショッピングモール』



「なにで?」



『…歩いてか、電車?』



「…車出そうか?」



『…え?』



「確かまだ免許は使えると思うんだけど」



起き上がってカバンの中を漁り出した。



「あ、ほら。まだいける」



え。



え?



え!?




『免許持ってたの!?』



「あれ、言ってなかったっけ?車も一応あるけど、ずっと乗ってないんだよね」




知らなかった。



「どうする?」



『えっあ、聞いて来る』




なんで今まで知らなかったんだろう…。




トミと千紗に聞くと、光がいいなら、とのことで、車を出してもらうことにした。



「んじゃ取りに行って来るからちょっと待ってて。20分くらいで戻れると思うから」



普段着に着替えて家を出た光。



こりゃあまだまだ知らないことが多そうだな。




「結奈、光くんが免許持ってるの知らなかったの?」
「チョーウケるんだけど!!爆笑!!」



『知らなかったものは知らなかったんだから、そんなに笑わないでよ!!』



大笑いする千紗に叫ぶ。



「いやーそれにしても」
「初めて会った時とは比べ物にならないくらい優しいじゃん」



『だから言ったでしょ。何も心配いらないって』



「ほんと良かったよー」
「まじ別人級だから」



家に来たばかりの時とは真逆の安心した声を聞けて私は嬉しい。



しばらくすると光が戻って来た。



「下に停めてあるから準備できたら行こうか」



クローゼットから抱っこ紐を取り出してせっせと準備を始める光に続いて私たちも準備した。



「結奈ー、マスクあったっけ」



髪の毛をセットしながら私を呼んだ光に風邪?と聞いた。



「いやー、撮られたら嫌じゃん」



あぁ、そういうこと。


芸能界を引退して結構経つのにそんなことを気にしなきゃいけないなんて。



芸能界ってとことんめんどくさいな。



「あるよ。はい」



マスクを1枚渡す。



「サンキュー」