春 〜Hikaru & Yuna〜

これでますます強くならないといけないと思い直した。



仕事を始めて結奈を愛せるよう努力した。






まだ結奈を完全には愛し切れずに時は経った。



結奈の陣痛が始まった。

すぐに救急車を呼んで病院へ急いだ。



陣痛が始まってから割と早くに女の子が産まれた。


結奈は喜びで泣いていた。


俺は、こんな時に不謹慎だけど、もう戻れない、なんて思ってしまった。


こんなことを考える自分を振り払いたくて、病院の外へ出た。

するとそこには優輝がいた。



「…ストーカーかよ」



元気なく発した言葉。



懲りないよね、と思いながら空を見る。



「何があったのか説明しろよ」



冷たい目で訴える優輝。



優しさはかけらもない。



もはや、俺を殺しそうなくらい凄んで来てる。



ちょっと泣きそうになる。



また、情緒が不安定になっていく。



忘れていた、いろんなことが思い出される。



「なぁ、お前今の女のこと好きなのか」



変わらぬトーンで続ける優輝が怖い。



俺が唯一ずっと怖かった存在が今、敵として目の前にいる。



優輝は人一倍優しいから、その分怒るとすんげー怖い。



恐怖で足が震えそうだ。




「分からない。好きかどうかなんて」




優輝への恐怖から、思ったより小声になってしまった俺の言葉を聞いて、優輝が本当に怒った。



ドスッ



胸ぐらを掴まれて地面に叩きつけられた。
危うく頭を打つ所だった。



「お前…!
そんな中途半端に子ども作って、ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!」



胸ぐらを掴まれたまま怒声を浴びせられる。



苦しい。



「お前の自分勝手な性格でどれだけの人間が犠牲になったと思ってる!
今の女だってお前がそんなんだったらいつか深い傷を負う。
いい加減直したらどうなんだよこの自己中がっ!」



「ゴホッ…ゴホッ」



勢いよく手を離されて咳き込む。



死ぬかと思ったくらい苦しかった。



苦しかったのとは違う、別の何かがこみ上げて来て、子どものように泣いた。




「ガキじゃねーんだからよ、もっと強くなれよ…」



言ってることはごもっともだ。



全部俺が悪いんだから。



俺が強くならなきゃ何も変わらない。



そんなことわかってる。



「じゃあ…どうしたらよかったんだよ…」



「何がだよ」



「葵を守るためにはどうするのが正解だったんだよ…!」



止まらない涙。



止まらない想い。



巻き込みたくなかった。



勝手に踏み込んで来て。



こればっかりは優輝が悪い。