結奈とじっくり話し合い、産むことに決めた俺たちは産まれるまでの準備を始めた。
妊娠5ヶ月の頃。
予想外な人物に遭遇した。
結奈を1人にするのが怖かった俺は、結奈が1人で暮らしているマンションに転がり込み同居した。
買い物は2人で行き、料理や家事は俺がやった。
今日もスーパーに行ってカレーの材料を買った。
帰り道。
たわいもない話をしながら歩いていると、前から男が近付いてきた。
その男を見ると、見慣れた顔の優輝だった。
「おいお前、あいつはどうした…?」
まさに顔面蒼白と言った顔で聞いてくる優輝。
「あのブスと別れたのかよ」
ブスって言うなよ。
「お前、本当に振ったのか」
立て続けに迫ってくる優輝。
俺は黙り込む。
「なぁ!お前葵と別れて何してんだよ!」
2歳年上ってだけあってさすがにビビる。
でも。
「優輝には感謝してるよ。でも、お前には関係ない」
こう言うしかなかった。
優輝を巻き込むのは嫌だから。
優輝は普段は冷たく冷めた人間だけど、俺のことは弟みたいに可愛がってくれて、いっぱい助けられた。
でも、だからこそもう、迷惑はかけたくない。
「お前さ、あいつのことどんだけ泣かせたら気が済むんだよ…。あいつがどれだけお前を好きでいたか分かってんだろ!?」
結奈の前でそういうことは言わないでもらいたい。
結奈だって困惑した顔をしている。
確かに俺は葵を傷付けたけど、もう終わらせるしかないんだ。
また、いつどこでどうやって誰に監視されているかわからない。
俺が葵に近付くと悪いことが起きるんだ。
だからもう。
「もうあいつもお前も関係ない!これ以上結奈の前であの女の話をするならお前を潰す」
「はっ…そうかよ。見損なったぞ。本当、人って簡単に変わるよなぁ!」
少なからずショックを与えてしまっただろう。
そんな顔をしていた。
どうしてこう、人を裏切ることでしか生きていけないんだろうか。
不器用とかそんな可愛いもんじゃない。
俺は人生をやめた方が周りのためになるんじゃないか。
「光!?私は大丈夫だから、帰ろう?」
沈みかけた俺を浮き上がらせてくれたのは結奈だった。
結奈はいつだって強い。
「嫌な思いさせてごめんな」


