心臓が音を上げたのが分かった。



ドキッ



と。




何も言えない。
声が、口が、体が動かない。



「今日病院に行って来たの」



ゆっくり、一言一言に重みを感じる。



「妊娠3ヶ月なんだって…っ…」



泣き出した結奈。



いつも強かった結奈が流した涙のワケは、俺が好きじゃないと言ったからなんだと分かった。



「でもねっ…まだ間に合うから…私、光が堕ろせって言うなら産まないから、これ以上私を嫌いにならないで…っ…うっ…うぅ…」



結奈の必死さ。



嫌い。



結奈はそう感じていたんだと初めて知った。




俺は結奈が嫌いなんじゃない。



好きになれないだけで、嫌いだと思ったことは1度もなかった。



これで更に俺が結奈を苦しめていたということが知ってしまった。



俺の態度は、そういうことを表す態度だったのか。



目の前で泣く”彼女”に、俺はなんて酷い仕打ちを繰り返していたんだろう。




俺は唾を飲み込み、覚悟を決めた。




「結奈、産んで。一緒に育てよう。
俺、もっと強くなって守るから。
今はなんの役にも立たないクソヘタレだけど、結奈と子どもを幸せにする。
約束する。
今まで本当に申し訳なかった」



気分が晴れ晴れとした。




子どもができたということは、父親になるということなんだ。


それに、子どもにはなんの罪もない。



産まずに殺してしまうなんて考えられなかった。



「うそ…光、無理しないで。私何も辛くないから…」



なおも泣き続ける結奈の後ろに回って、肩をそっと抱きしめだ。



震えるこの子を守らないといけないと決心した。



どんな気持ちで家に来たんだろう。



こんなに震えて、泣いて。



とても怖かっただろう。



否定されるんじゃないか、拒絶されるんじゃないかって。



俺はとことん最低な男だ。



結奈、本当にごめん。