『もしもし?光、どうしたの?』



「葵、俺らそろそろ潮時やないんかなって思うんよ」



自分の愚かさに絶望し、淡々と嘘を並べた。



『え?』



「俺好きな人できてん。別れよ?」




今にも泣きそうになる。
声が震えないように必死で堪える。



『え、ちょっと待ってそれいつの話?どういうこと?』



「実は2ヶ月前からその子と付き合ってんねん。言うの遅くなって悪いけど、そういうことやから。じゃ」



涙が頬を伝ってしまいもう限界だと感じ、一方的に通話を終わらせてしまった。



今日のバイトは葵と同じ時間帯のシフト。



もう、全て放棄しよう。



『はいー、どうしましたー?』



呑気な店長の声。



「今日でやめます。お世話になりました」



きっと魂の抜けた声だっただろう。



『はい!?困るよ!!今日カツカツなんだから!ていうか辞められても困るよ!一度お店に来て話を!!』



耳障りだ…。



やけに元気な声が頭にガンガン響く。



躊躇うことなく通話を終了した。