春 〜Hikaru & Yuna〜

盗聴器…!?



いつの間に…?



家も安全じゃないということか。



まさか、葵の家にも盗聴器が!?



まだ新しい発信履歴に残る手紙の送り主に電話をかけた。



『手紙読んでくれたか?』



「盗聴器って、葵の家にまで付けたんじゃないだろうな?」



『安心しろ。
あの女にはまだ手を出していない。
その予定もない。
全てはお前の行動にかかってる。
お前が盗聴器を外したり、警察に通報すれば、昨晩の行為を録音したものを週刊誌に売ろうとも考えている。
Yの恋物語だけでも高く売れるのに、生の声が入っているものなんて売ったら働かなくてよくなるかもしれない!
あああ、考えるだけで幸せになれるよ。

それに、相手の女は誰だと話題になるだろうね?
それこそどうなるか分かったもんじゃないさ』




「…本当に、何が目的なんだよ」




『あぁ、もう話してもいいね。
家族がね、Yのことが大好きでね。
勝手な引退宣言をした後で自殺したんだよ。
当時の新聞にいっぱい書かれていたよね。
一般女性との交際が原因か、って。
自分はこんなにも愛しているのに、どうして一般女性が割り込んでくるんだと嘆いていたよ。
その子の部屋にはね、そういう記事の新聞や週刊誌が切り刻まれたものがたくさん落ちていたよ』




「………」




『家族一丸となってその一般女性を探した。
やっと見つけたよ、中野葵。大して可愛くもない女だ。
お前の隣にいるべき人はあの女じゃない。だから罰を与えるんだよ』




「…もうその人はいないんだろ。だったら俺が葵と付き合ってたって関係ないじゃないか」




『殺人犯とその協力者は罰するべきなんだよ』




「殺人犯…って、俺は……」




何も悪くない。



そうは言い切れなかった。



事実、あの引退宣言は俺がマコにキレた勢いで言ったものだ。


誰に言われたわけでもない。


自分で勝手に言い出したことだ。



マコの言葉も全て無視して。
俺が殺してしまったも同然なのかもしれない。