「井上さん、いい加減態度を改めなさい」



横から割り込んで来たのは井上さんの上司で俺の部下に当たる桜井さんという姉御肌系の社員。



「山城さんじゃなくて山城部長。ありえないとかそんな失礼なこと言わないの」



「ええ〜だって〜本当のことだもーん!」



上司に対する態度の方が問題だと思うけど…。



そうそう。
俺は1度ここで倒れてから信用を失ったとばかり思っていたのだけれど、あの時村井さんが言った『君が必要』という言葉は村井さんの本音だったようで、しばらくすると突然部長に任命されたのだった。



「あ、そうだ部長。この前お願いした資料のチェックなんですけど、、」



「ん?あぁ、これね。はい。ここだけこんな風に直してみるとより伝わりやすいんじゃないかな」



先日桜井さんに事務作業で使う資料の確認を頼まれていたのをすっかり忘れていた。



入社当時は得意としなかった事務の仕事も最近はよく任されるようになった。



それでもやっぱり得意ではないんだけど。



「部長って」



桜井さんが俺の付けた付箋を見ながら何かを言おうとすると次は井上さんが割り込んで来た。



「字、綺麗ですよね!」



「もう!さっさと準備して仕事場に行きなさい!

すみません。教育がなってなくて。本当、字が綺麗で読みやすいです。ご指摘ありがとうございます。では、私も事務に戻ります」



井上さんを怒る桜井さんは鬼のような顔をしていて怖かったけど、それは結構いつものことで和んだりする。


「おはようございます」
「おつかれさまです!部長!」
「お先失礼します!」


次々と出勤してくる人と、交代で上がる人たち。
ここで働く人はみんな仲が良い。

俺はこの職場が大好きで大切だ。






今日も1日が始まる。




なんだかとても良い日になりそうだ。











END.