春 〜Hikaru & Yuna〜

本心だった。



「わざとじゃないんだし。タイミングでしょ。ていうか注文しないとそろそろ店員の目が痛い」



空気を変えたかったのもあるけど、事実店員がチラチラこっちを見ていたのもあっておつまみとビールを注文した。



「とりあえず乾杯ね」



ジョッキをコツンとぶつけて喉へ流し込むビールはキンキンに冷えていておいしい。



「あの、それで、えっと、……
友達でありながら本当に申し訳ないことをしたと思ってる。
ごめんじゃ済まされないことをしたとこの前のテレビで改めて思った。
だから謝りたくて。本当にすみませんでした!」



勢いよく席を立って頭を下げる健二。



周りの客や店員がこっちをガン見する。



「まぁまぁまぁ、目立つから。もういいよ」




本当、どこまでも素直な人だと思いながら俺も立ち上がって健二の肩を軽く叩く。



「怒ら、ないの?だって俺、光や葵を売ってお金を稼いだようなもんなんだよ?」



座り直したかと思うとグイッと顔を近付けて来た。


そんな健二の一生懸命さに心打たれてこう言った。


「んー。もう終わったことだし。いいんじゃない?」



俺の脳では健二を悪者として扱うことができないらしく、別にいいよと笑った。



「光…ひかるぅ…俺、本当に馬鹿だった。光は本当にいい奴だよなぁ。ありがとう。ありがとう」



大人の男が大粒の涙を流す光景は滑稽で、近くの席の人たちは呆れ顔で笑っていた。


俺も健二のその姿には少し笑えた。