あの時君が伸ばした手は

「あ、あの!」

僕が声をかけるとお爺さんは振り向いた。

「なんだい?」

「この花束って誰が置いたんですか?」

お爺さんしばらく宙を見て、答えた。

「確か、昨日の夕方、松葉杖をついた男が置いてったのを見たな。その男満身創痍だったけど。」

「誰だか分かりますか?」

「さぁな。でも病院着みたいなの着てたぞ。」

お爺さんは帰っていった。