思えばあの日、あの時、オレンジ色に染まった空が手に届きそうなほど近かったくらい高い高い屋上に立った時が間違えだったのかもしれない。 風が心地よく、まだ暖かさの残った秋には丁度良い頃だった。 「下を見てはいけないよ。君は僕が好きかい?」 大好きな彼が微笑みながらわたしに囁く。 わたしは彼が好き。 彼のためならわたしはただの人形でもいい。 烏の鳴く声が響き渡る。 「君も鳥達と空を飛ぶんだ。この屋上から、さあ」 彼の言葉はいつでもわたしの中で暖かく響く。 「さあ」