「うわっ!う、うぅぅ・・・。」
転んだ。見事なほどに。

──小学校2年生のある日の中休み。
友達と鬼ごっこをしていた私は、高学年のサッカーをしていた男の子達にぶつかった。
見事に足を擦りむいて、それが痛くて立ち上がれず、その場にへたりこんで私は泣いていた。
今思えば、「泣いてないでさっさと保健室いけばいいでしょ!みっともない!」と思うのだが、実際、そうしていて良かったと思う。
なぜなら、それが私の、本当の恋をするきっかけになったから。

泣いていた私に、声をかけてくれた子がいたのだ。
彼の名前は「笹木 壮」。
私と同じクラスだったけれど、その時声をかけられて話すまで、多分一度も話したことなんて無かったんじゃないかと思う。
でも彼は、へたりこんで泣いている私に声をかけ、保健室へ連れていってくれた。
どうして声をかけてくれたのか聞いたけれど、返ってきたのは、
「別に。」
たったそれだけだった。