パタン ──魁斗が出ていって静まり返った室内 「…ちょっと待ってろ」 腕を引かれソファに座らされた私にそう言って蓮はキッチンに向かった。 …――しばらくするとフワッと甘い香りが鼻を掠めた。 この香り…… コトッ 「飲め」 黒のマグカップの中で揺れる液体 『ココア…』 「ああ。これ飲んで落ち着け」 『いただきます…』 せっかく作ってくれたのでひとくちだけ頂くことにした。 両手でマグカップを手に取り、息を吹きかけ少し冷まし淵に口をつけた。 ゴクッ 温かい液体が喉を通ってゆく