『メイクも髪型もそうですけど、他人にここまでやってくれる椿さん、凄いです』
「え。でも体験入店だからこれくらい当たり前よ」
その言葉に私は小さく首を横に振る。
『いいえ。それなら他人の髪型にこんなにも悩みませんよ』
「?どういう意味??」
首を傾げ、困惑の表情を浮かべる椿さんに小さく笑みを零す。
『何でもないです』
「…そう。まあいっか」
そう言うとヘアアイロンを手に持ち、髪を巻き始めた。
ヘアクリップで髪を分け1束、1束器用に巻いていく。
椿さん。他人の髪を弄るの、好きなんだ。
「……それにしても。本当に綺麗よね」
『へ、…?』
ふと頭上から聞こえた小さな呟きに変な声が漏れる。
「顔立ちも良いし、髪と瞳は綺麗なブラウン。無駄に飾らなくて本当に羨ましい!」
『………?』
「…ふふ、自覚が無いのね」
『…言われ慣れてないので、どう反応すればいいか……、』
「そういう時は“ありがとう”と言えばいいのよ」
コテで綺麗に巻きながら笑顔でそう答えた椿さん。
