「はい」
ある日の夜、桜が寝てから帰宅した夫は、丁度水を飲みに起きてきていた私の前に紙袋を差し出した。
「え?・・・ええと、何、これ」
寝ぼけた頭でその瞬間、私は目まぐるしく考えまくった。ええと?今日何かの記念日だっけ?いやいやいや、私達に記念日など滅多にないし、そもそもヤツが覚えているのかが謎だ。じゃあそれは違うとして──────え、もしかして、私へのプレゼント!?
脳内で、そんな変換がされたって仕方ないよね。私は一気に目がさめた状態となって、ヤツが差し出す紙袋を両手でがしっと掴んだのだった。
だけど、やたらと細長いシンプルな紙袋から出てきたのは、ロールカーテンを短くしたような代物だった。巻き物風というか。ほら、くるくると巻いてあって、その真ん中から棒が突き出しているようなあれだ。
「・・・何これ」
巻物?いや、でも布だよね・・・。
ぽかんとした顔をしていたと思う。ヤツは渡すだけ渡すと仕事は終わりとばかりに洗面所へいってしまって、完全にあけてしまっていいものかを悩んだ私がその問いを投げかけるにも10分がかかったあとだった。
ちらりとこっちをみて、無言で台所へと入るダレ男。・・・あけていいってことよね?勿論。
ヤツが何も言わないので仕方なく、私は一人でそれをするすると開け出した。
すると出てきたのは!
なんと、お雛様だったのだ。
「・・・・・・わーお」
そんなシンプルな感想だったけれど、実際のところ、私は見惚れていたのだった。



