新・鉢植右から3番目


 とりあえずそんな夫とまだ宇宙語を話し泣くしか出来ない赤ん坊とが家族な私は、普通の会話に飢えていた。

 普通の会話というのは、それこそ一般的なことだ。天気の話から新聞を騒がす事件の話、血液型や昨日のご飯や子供の名前やそんなことぜーんぶ、を指す。うちの夫と赤ん坊とは出来ないでしょう~?無理無理、特に夫とは無理。天気の話、スルー。今日の話題、黙殺。血液型の話なんてものにいたっては恐らく目の前で眠りだすと思われる。桜はもうちょっと大きくなったら出来るかもだけど。

 それで、働きに出たいのだ。ざわざわとうるさい社会に出れば、家が静かで落ち着いているというのは心の安定に役立つだろう(と、思う)。

 だから桜は保育園に入れて・・・

「じゃあ、とにかくちゃんとお披露目はしてよね、お友達から貰ったお雛様が家に来たら」

 うちの母親がそう言って、私はまた固まった。

 ・・・くそ、蒸し返したな~。

 私はかなりひきつった笑顔で頷いた。

 だって、それしか出来ないでしょ?


 だからまた家族会議を開いたってわけ。会議といっても私が一方的にしゃべるってことなんだけれど。今日のダレ夫の帰宅は早かったので、まだ桜に離乳食を与えている段階ですでに私はぶーぶー言っていた。

「どうしたらいいの?私元々人形って苦手でさ、自分で買うのもちょっと抵抗があるし・・・」

 眉間にくっきり皺をよせてそう唸ると、夕方に急に食べたくなって大量に作ったおでんをガツガツと平らげながら、ヤツが言った。

「無視すれば」