「都!なんてことを・・・」
母親は、ここでようやく絶句して言葉をなくした。やれやれ。娘にこんなこといわせないでよ全く!
私は寝ている桜に遠慮して声のボリュームを抑えながら、にらみをきかせて言った。
「だいたいね、お母さんは自分がそれを伏尾のおばあちゃんに言われたと想像したら、一体どういう気持ちなのよ?折角漆原家の皆さんが私の実家に近い場所に家をたててくれたけれど、こんなことならどこか遠~くの場所にすれば良かったわ!うるさくてかなわないわよ!」
これも効いたらしい。
私の母方の祖母である伏尾のおばあちゃんとは、実の親子ながらうちの母は折り合いが悪かったのだ。もし自分が言われたら、とすぐに想像したらしく母はぐっと詰まったし、漆原家の冴子母さんは冴子母さんで真っ青になって、隣の親友の腕をつかむ。
「ね、唯ちゃん、そんなにむきになることないわよ。何たって孫がいるってだけで素晴らしいことなんだから」
うちの母もちらりとリビングの一角におかれているベビーベッドを振り返ってから頷いた。
「・・・そうよ、ね。私ったらちょっと熱くなっちゃって・・・」
そうだ!まったくしつこいんだから!
しょんぼりと肩を落とす両母親を見て、私もようやく怒りをといた。
お世話になっていることは痛いくらい判ってるし、感謝もしている。それになりよりうちの娘を大変かわいがってくれた結果がこの件なのだ、とはちゃ~んと判っているのだ。
だからとりあえずお茶を入れ替えて、それからは春からいれようと思っている桜の保育園の話を始めたのだ。



