「そうでしょ!?そうなのよ!それが毎年なのよ、掃除だって大変だし、それに人形には魂がやどるって言うし!」
幼少児に見たアニメの特番で、使われなくなったお雛様が恨みをもって主人公の枕元を浮遊するっていう恐怖の映像を見てから、私はどうも人形って苦手なのだ。顔がついてるんだよ、だって!どうするのよ闇でにやりとか笑ったら~!!
一人それを想像してうひゃあああああ~って背中を震わせていたら、ダレ男がのそのそと洗面所へと向かいながら言った。
「じゃ、断ったのでいいんじゃない」
「え」
「断ったんでしょ、母親の提案は」
「うん、まあそうなんだけど」
「じゃ、それで」
「え」
ええと・・・・。と思っている間に、ヤツはバタンとドアを閉めやがった。・・・・ええとおおおお~・・・。いや、確かに断ったのだけど、それは今日だけのことなんだよ!ってかそれがちい~っともヤツには判ってないんだなあ!
私はがっくりと床に手をついて頭を垂れる。
ああ、どうしよう・・・。きっとまた、日をあけたらくるはずなのよ、母親たちは。とにかく言い訳にした「友達がくれるお雛様」を見せるまでは、きっと!
・・・ああああああ~・・・。
今更ながら、逃げる為にした言い訳をめちゃくちゃ後悔した私だった。
ちゃんとした人形でなく「置物」程度なんかじゃ、満足してくれなさそうだし・・・。ダンナはあれで役に立ちそうにないし。ど、どうしたらいいのよ本当に!!
秋の夜長、そのままお風呂に入ってしまった夫を恨みながら、私は床に倒れ伏していたのだった。



