振り返ったヤツの顔は、ハッキリと面倒臭いと書かれていた。
「・・・別に出さなくてもいいでしょ」
「出さないとだめになるのよ!買って貰っちゃったら!」
当たり前だ。それが楽しみで、それを見て孫娘が喜ぶところを見たいから買うのだろうし。それをバックにして写真を撮りまくりたいに決まっている。下手したらそれを年賀状に印刷するかもしれないのだぞ!そりゃあ、私の個人年金かけてもいいけど毎年毎年監視しにくるだろう。それだけ近いところに実家はあるわけだし、しかも両家はやたらと仲良しなのだ。
絶対ひな祭りパーティーとか、企画するわよあの人達・・・・。
私とて、お雛様は嫌いではない。小さな頃は確かに嬉しかったし、飾るのも楽しかった。それに日本人の伝統行事であるそんなことだって、家族が出来たからってだけの理由で参加したいものなのだ。独身時代に不倫をしていて色々寂しかった女としては!
だけどそれは、そんなにゴージャスでなくていい。こじんまりと、和やかに、あ、あったよね、今日も綺麗だね、程度の飾りで十分だと思っているのだ。
「母親たちが出してくれると思ってるなら間違いよ!きっとあの人達はお雛様を出しながら口も出すに決まってるんだから。冴子母さんなんて、あなたが休みの日にあわせて突撃してきて、あなたが動くまでガミガミ言うに違いない!想像つくでしょ!?」
私が必死こいてそうまくし立てると、ヤツははあ~、と静かにため息を(しかし重いやつを)はいた。想像がついたらしい。
「・・・・面倒臭い」



