救急車が私達家族を運んだのは、隣町の市民病院だった。緊急時はここに運ばれることが多いってことすら、私はその時初めて聞いたのだ。

 救急車の中で、娘は痙攣は止んでいたけれどもぐったりとベッドに身を横たえている。救急隊員が酸素マスクをあてているのを見ながら、私は彼らから発せられる矢継ぎ早の質問に必死で答えていた。

 いつから発熱していたのか、痙攣はどのくらいの時間か、今までにあったことなのか、それから出産時の異常の有無や体重、最近の様子や食べていたものなど。

 そこで自分が情けなくなったのだった。

 だって、ここ最近の私はホルモンバランスによる臨戦対戦モードになっていて、拒否してしまった夫に対しての考えで一杯一杯で、そこまでしっかりと娘を観察していなかったのだ。

 何度も詰まった。

 思わず口に手をあてて青ざめる私に、まだ20代と思われる隊員のお兄さんが真面目な表情を向ける。その顔には、あんた母親なんだろ?なんで答えられないんだ、という文字がデカデカと見えた。いや、実際にはお兄さんはそんなことを思っていなかったのかもしれない。きっと、多分。だけど罪悪感に打ちのめされた私にはそう見えたのだ。

「えっと・・・」

 隣で無言で座る夫が、チラリと私を見たのが判った。

 ・・・ここ、最近。桜はどんな便をしていた?どれだけの感覚でミルクを飲んだ?体重は?────────やだ、私・・・答え、られない。