夫婦の会話は格段に減っていた。なんせ、やつは元々無口で必要なこと以外口にしないし、私は勝手に挙動不審で、何を喋ったらいいのかが判らずに話しかけられない。そうこうしている内に桜が泣き出し、子供の相手をするだけになってしまっている。

 今年の私の誕生日には、何もなかった。

 それも、ずどーんと気分が落ちている原因だった。

 結婚した時には、彼はちょうど仕事の面接がうまくいかずに泣きくれていた私を元気付ける為に深夜にも関わらず温かい雑炊を作ってくれたし、去年の誕生日にはサルビアの鉢を落としてしまった私に、代わりにって苺の鉢植をくれたのだった。

 私はこの面倒臭がりの、淡々とした男が自分の誕生日を覚えていてくれたのだってことから感動した。なので、少なからず期待をしてしまっていたのだ。今年も、何かくれるかもって。そうしたらそれがきっかけで会話になるかもって。

 なのに。

 なのに。

 終わってしまったのだった。私の33歳の誕生日。まあ今や近くに住む実家の両親や、夫の両親や、少ない友達から「おめでとう」メールが来たりはして、それはそれで嬉しかったのだけれど。でも、ヤツからは何もなかった。

 その日は帰宅も遅かったので、いつもの通りに私は彼のご飯の準備だけをして先に寝てしまっていた。そして、夏が繁忙期であるヤツは翌朝も始発に乗るくらいの勢いで仕事にいってしまったので、結局その前後で3日間口もきいてなかったのだった。