公平なわけでは絶対ないが、ただ単に面白いからって理由だけで経験者ではないが自分の意見を持っている友人の代表として、親友の位置をしめている榊奈緒にも聞こうかな、と思ったのは、私が暇だったからというのもあるだろう。

 デザイナーの奈緒は、今では日本で結構な事務所を開いてバリバリとキャリアを驀進中の女だ。うちの夫である漆原大地とは学生時代に何度かクラスメイトとして過ごしたことがあるので、夫婦ともに知っている知人でもあった。

 いつかけても忙しい奈緒には遠慮などせずに、こっちの都合のいい時間に電話すると決めている。そんなわけでまた娘の昼寝タイムに電話をかけたのだ。すると、彼女は一言目でおっも~いため息を吐きながらこういい捨てた。

『人妻になってしかも分身まで産んだ女が、忙しくて睡眠時間もない独身貴族の私に電話するってことは、それだけ面白い話なんでしょうね?』

 って。

 正直な私は電話の前でしばらく悩んだ。・・・・・面白い?・・・いや、きっと全然面白くないだろうしな、って。そこで忙しい彼女には為にならないどころかストレスの原因になるかもしれない、と考えて、受話器を置こうとしたのだ。ところがそこで、奈緒の罵声が聞こえた。

『こら、都っ!!用事も言わないで切るバカがどこにいるのよ!あんたマジで私に喧嘩売ってんの!?』

 どうやら余計にイライラさせたらしい。

「──────あ、ごめん。いや、でも面白くない話だろうなあと思ってしまったから。いいのよ、忙しい時に邪魔してごめんね。睡眠不足の辛さだけは物凄く判るから、そっちも体には気をつけてよね」