【ヒナ】
シリウス…。
暗い、暗い、漆黒の色。
無数の粒が、白く光って、流れて。
毎晩飽きることなく見る星の欠片が、昔からどうしても手に入れたいものだった。
それがあなたを縛っていたとも知らずに。
ごめんね。
ひどく傷ついてたのはあたしなんかじゃなかった。
そんなことにも気づかないほどあたしは子どもで。
もう今さら遅いよって。
何も戻らないよって。
そんなこと分かってるけど。
いくら言い聞かせても期待しちゃうあたしの脳みそは、一体何が詰まってるんだろう。
でも空っぽなあたしにも、あの光だけが残ってるから。
それだけでもう十分だよ。
そう思えるぐらいには成長したと思うんだけど、ガキだなっていつもみたいにまた笑うのかな。
でもね。
あの景色を。
あの日々を。
もう全てを。
置いていっていいんだよ。
背負っていた荷物を降ろして。
あたしからアナタを捨てることはできないの。
知ってるでしょ?
ねえ。
星の降る綺麗な夜は、決まってあなたを思い出す。
今日もね、南の空にシリウスが光ってるよ。
綺麗な青白い光は、あたしの胸を焦がす。
そうして恋い焦がれた星に、幾度となく夢を見てきたの。
届かない気持ちを心に焼いて、今日もあたしは空を見るでしょう。
蒼き光にあなたを映し、あたしは、あの星を追いかける。


