しんちゃんとみぃ


「みぃ。CD貸して」

放課後
教室を出ようとしていたら
しんちゃんの声が背中から聞こえた。

振り返ると
しんちゃんは練習着の着替えを持ち
いつもの笑顔で私を見て話しかける。

しんちゃんが
私に話しかけてる?

あまりに突然すぎて
心の準備ができてない。

「CDって?」
声の語尾が震えた
意識しすぎだ私。
もう少し
自然に会話しなきゃと思うけど
やっぱりドキドキして
心拍数が急上昇。

「ごめん……あのさぁ……」
しんちゃんは一歩私に近寄り
最近私が買ったCDの話を始めた。

そんなにメジャーとはいえないけど
知る人ぞ知る人気バンドでボーカルの切ない高音がギュッとくる。
こないだ買ったのは彼らの3枚目のアルバム。

「俺も好きなんだ。よかったら貸してくれない?」
両手を合わせて私に頭を下げる。

いいよって
ひとつ返事をしようとすると

「えーっ。どうしようかなー」

智ちゃんがひょっこり
私の肩越しに顔を出した。