「俺達、悪魔には昔から伝えられている話がある」

「どんな話なんですか?」

私がそう言うと、シグレさんはあきれた顔をして「これから、話すから黙っててくれ。」と言った。だから、私は黙って話を聞くことにした。

「昔、あるところに一人の人間がいました。その人間は、心優しい人でした。
ですが、ある日その人間の最愛の人が殺されてしまいました。
その人間は、犯人を憎み殺してやりたいと思いました。ただ、憎む気持ちとは別に最愛の人の分まで生きようという気持ちがありました。
その人間は、この二つの心に引きちぎられそうになりました。その時、人間は気づきました。この二つの心を神様にどうにかしてもらおうと。神様は人間の話を聞くと、その人間の心を取り出しました。神様は人間の心を見ました。するとその人間の心には真っ白な部分と真っ黒な部分がありました。その二つの部分を見た神様は、その人間の心を二つに割ってしまいました。
ですが、割ってしまうだけじゃかわいそうだと思った他の神様は、二つの心にそれぞれ命を与えました。そして、真っ白の心は天使、真っ黒の心には悪魔と名付けました。」

二つに別れたうちの一つが天使…
神様は何てひどいことをするんだろう人間の心を取りだし、その心に命を与えるなんて。何て身勝手なんだろう。

「これが、俺達に伝えられている話だ」

「本当に、天使と悪魔はこうやって生まれたんですか?」

「それは、わからない。あくまでも話だからな」

でも、この話には不思議なところがある。それは、真っ白な心と真っ黒な心の部分。これだけ聞くとどちらが綺麗な心で、どちらが汚い心か見当がつかないというところだ。