眼鏡とハンバーグと指環と制服と

「ただいまー」

「おじゃましまーす」

「おかえりー。
夕葵ちゃん、いらっしゃい」

エプロンで手を拭きながら出てきたおばさんは、やっぱり私の描いてる、お母
さんの想像図にぴったりだ。

「外、暑かったわよね?
いま冷たいお茶淹れるから。
座って待っててね」

「おかまいなくー」

亜紀ちゃんが自分の部屋へと階段を上がっていく音を聞きながら、勝手知った
るなんとやらでリビングの、私の所定の位置に座る。

「もう、夕葵ちゃんが来るの早く知ってたら、お菓子作ってたのに。
莫迦娘が急にいいだすもんだから、コンビニスイーツしか買えなかったわ」

「すみません。
なつにぃの連絡、確認したのが帰りだったから」

「いいのよー、夕葵ちゃんは気にしなくて」

おばさんはにこやかに笑いながら、私にお茶とお菓子を出してくれた。
それを食べてるあいだに、亜紀ちゃんが着替えて降りてきた。