眼鏡とハンバーグと指環と制服と

「なつにぃ、今日飲み会で遅くなるから、先に寝てて、って」

「……なんかまるで、夫婦の会話だな」

くくっておかしそうに、亜紀ちゃんは笑ってる。
今日は香織ちゃんは部活だから、亜紀ちゃんとふたり。
ちなみに香織ちゃんが入ってる心霊研究会、という謎の部活は、月に数度、気
が向いたときにしか活動していない。

「え、あっ、そんなこと……ないよ」

「まあそれなら、今日の晩めしはうちに来て食べないか?
母さんもこのあいだ、夕葵とゆっくり話ができなかったって残念がってたし」

「いいの?」

「ああ。
一応、連絡入れとくか」

吊革に掴まって、携帯を操作し始めた亜紀ちゃん。
私よりあたま半個分背が高くて、やっぱりかっこいいと思う。

「ん?夕葵、私に惚れるなよ?
月原に恨まれる」

「そんなんじゃない!」

ふくれて見せたら、あたまを撫でられた。

「ほんと夕葵は可愛いよな。
……母さん、大喜びしてたよ」