眼鏡とハンバーグと指環と制服と

「身体は心配されなくても、少しずつ元に戻ってきますから。
それまでは遠慮なさらずに私にでも岬にでも、お申し付けください」

「……はい。
よろしくお願いします」

柏木さんの手がすーっと上がったと思ったら、さっと下ろされてぎゅっときつ
く握られてた。
顔を見上げると、いつもの不機嫌顔なんだけど……どこか、後悔してるみたい
な。

どうしたの、かな。


それからしばらくのあいだ、柏木さんは朝になると私の病室から会社に行き、
夕方になると戻ってきて泊まってた。

戻ってきた柏木さんは私がまともにスプーンが握れるようになるまで毎日、ア
イスやプリンを食べさせてくれた。
それがちょっと恥ずかしいんだけど嬉しくて、複雑な気分。

その日、なんとなく思い出したことがあって、柏木さんに話してみた。

「目が覚める前、夏生に会った気がするんです」

「……月原さんに、ですか?」

「はい。目を開けたら、夏生がいて。
一生懸命話すんだけど、なにもいってくれなくて。
もっと話さなきゃ、って思うのにまたすぐに意識が途切れちゃって」