眼鏡とハンバーグと指環と制服と

「ああ。
先方に行く途中で、こちらも急ぎではないですが、用があったことを思い出し
まして。
電話をしたところ、別に呼んでないといわれました。
それでおかしいと思い、急いで戻って参りました」

「……そう、なんだ」

「はい」

柏木さんはまだ、私の背中を撫でてる。
何故か、夏生にされてるって錯覚しそうなくらい、気持ちいい。

「夕葵さんは、もしかして、その、……まだご経験が?」

「……ない、です。
おかしいですよね、結婚してたのに。
でも、夏生は私が卒業するまでしないって決めてたから。
教師と生徒だから、って。
そういうとこ、妙に真面目な人だったから」

「そう、ですか」

「……はい」

「今日はもう、ゆっくりされていてください。
あとでお茶、お持ちしますから」

「……はい」

ゆっくりと、柏木さんが離れる。
もっとこのままでいて欲しいと思ったことに、罪の意識を感じていた。