眼鏡とハンバーグと指環と制服と

事故現場は凄惨なものだったそうです。

猛スピードであなたのご両親をはね飛ばした車はバックで戻ってもう一度ご両
親を轢き、さらに前進してもう一度、合計三度轢き殺して逃げました。

現場の道路は血で染まり、その中に潰れたケーキが落ちていたそうです。

赤い血と白いクリーム、そして苺が妙に毒々しかったと、現場に駆けつけた警
察官が語っていました。

きっとそれが、あなたの意識に事故現場の象徴として強く植え付けられ、ショ
ートケーキが怖くて食べられなくなったんじゃないでしょうか?


私の知らない、事故のこと。
夏生もおばあちゃんも、ただ「事故で死んだ」としか教えてくれなかった。
轢き逃げ、だったんだ。
しかも執拗に何度も轢いて。

「……犯人は捕まったんですか?」

「まだ、というか、すぐに捜査は打ち切られました」

「どう、して……」

「上からの圧力、としか」

……あ。
この柏木さんの顔、知ってる。
夏生が私に隠し事をするときと、同じ顔。