眼鏡とハンバーグと指環と制服と

「ああ。
私は大学行ってやりたいことがあるから。
もう希望の大学、出した」

亜紀ちゃんは外見に似合わず(というと怒るけど)、古典文学、特に源氏物語
が好きだ。
中学のときから、大学行って極めたい、っていっていた。

「私は適当に行ける大学行くかなー。
別にやりたいこととかないし。
大学行って、適当に遊んで、そんで就職する」

にひひっ笑ってる香織ちゃんは、いかにも女子大生が似合いそうだ。

「……ふたりとも一応、考えてるんだ」

「夕葵はどうするんだ?」

「わかんなーい。
ついこのあいだまでは、早く就職しておばあちゃん楽させるんだ、ってそれし
か考えてなかったからー」

いきなり白紙になってしまった私の進路。
ほんと早く、おばあちゃんに恩返しがしたい、ってそれしか考えてなかったか
ら。
突然、他の選択肢も選べる、っていわれても困ってしまう。

「まあ、夕葵の場合、ネックは学費、だろうけど」

「ああ、それは心配ないってー。
おばあちゃん結構貯め込んでたみたいで、よっぽどのことがない限り、大学行
くくらいの学費と生活費はあるって、弁護士さんがいってた」