眼鏡とハンバーグと指環と制服と

「ああ」

「その割に、一度も帰ってこないよね?
母さんの墓前にすら、手を合わせにこない」

「その、おまえと顔を合わせるのが気まずくてな。
美耶子に出会って、やっとどうやったらいいのかわかってきて。
おまえのことをほったらかしにしてた癖に、いまは家庭を大事にしてるとか、
その、なんかな」

「いまの家庭が大事なんでしょ?
僕なんかどうでもよくて。
この家のことだって」

「それは違う!
向こうのお父さんがな、自分の孫可愛さに、その、おまえのこと、よく思って
ないんだ。
だから、せめてこの家だけでもおまえに残したくて」

「……そう」

……沈黙。

夏生の顔を窺うと、……複雑な、顔。

「……ごちそうさま。
すまんがもう、休ませてもらう」

「あ、はい」

急いで和室にお布団をひくと、お父さんは襖を閉めてしまった。