眼鏡とハンバーグと指環と制服と

そんな状態だったから、単身赴任するっていわれても、なんとも思わなかった
し、かえって清々した。

そして一年もたたないうちに、僕に相談もなしに再婚だよ?
もう勝手にやって、って感じ。

再婚相手の美耶子さんがまた、僕に余計な気を遣うんだよ。
こっちは知りたくもないのに、定期的に近状とか書いた手紙、送ってくるの。

知ってた?
僕、会ったこともない弟と妹がいるんだよ。

それでさ、もっと嫌なのが、あんなに僕と母さんをほったらかしにしてた父さ
んが、今度は家庭を大事にしてるの。
弟の誕生日に自転車を買ってくれました、とか書いてあるとさ、もう複雑な気
分だよ。

だって、僕は父さんから自転車どころか、おもちゃのひとつすら、買ってもら
ったことないんだよ?

しかもこの家、なんで僕の名義になってるか知ってる?

この土地と家は僕にやるけど、あとの財産は全部、弟と妹のものなんだって。

勝手もいいとこでしょ?
これだけ好き勝手しといて、僕にいまさら、なにをいうつもりだっていうの?


いたたまれなくて夏生をぎゅっと抱きしめると、びくりと身体が震えた。