カルマノオト

脇からくいっと手首を掴まれる。


苛立ち喉が渇き、目の前にあるグラスの中のワインを口にしようとした瞬間だった。




手首を掴む筋張った大きな手は過剰なほどの深爪。


私へ向けられたその声は、数時間前の記憶を再び脳裏に走らせる。




「隣、いい?」




私が返答する間もなく、彼は私の左隣の席に座った。




「ジンジャーエール、頼んでもらってもいい?」




彼の指差す方を見ると、私の座る席の奥にスタッフ呼び出し用のボタンがあった。


こくりと頷き、言われるままに店員を呼ぶ。