渋めの日本茶を一杯飲んだらこんがらがっていた頭がすっきりした。
タマミは俺の膝から離れ、今はうつぶせになって猫缶に食らいついている。人間の姿では食べづらいのか、口のまわりがレバーペーストまみれになっており、なんというか、かなり異様な光景だ。
「ハルキひゃんの望みは、らいたいわかりまひた」
大方たいらげてしまったあとも、まだ猫缶に未練があるようで、喋りながら、長い舌でちろちろと缶の底をさらっている。
ポケットティッシュで口のまわりをふいてやると、タマミはようやく食事を終わらせ、手の甲を舐めながら顔を洗いはじめるのだった。
俺はどうも見てはならないものを見ているような気がして落ち着かなかった。
「別れてしまった彼女とよりを戻したい、のですね?」
ようやく人間モードにスイッチが切り替わったらしいタマミが、落ち着いた声色で俺の望みを反芻する。
そう、何か一つ願いを叶えられるとしたら、今の俺が望むことは決まっている。明奈との復縁!元サヤ!ハッピーエンド!これしかない。俺は力強く頷いた。
「それにはまず、ハルキさんが、明奈さんとお別れになった経緯を、お聞かせ願わなければなりません。おつらいでしょうが、簡単でかまいませんので」
タマミが憐れみをこめた目をこちらへ向け、慈悲深い声で言った。
フラれた理由…。
かなりみっともない、というか恥ずかしいが、このさい仕方がない。俺はなるたけ簡潔に、失恋の顛末をタマミに伝えたることにした。