別れの場面までをあざやかに回想してしまい、めそめそ泣いてしまいそうになった時、それまで大して関心もなさそうな眼差しでじっと俺の様子を眺めていたタマミが、突然ひざの上に乗ってきた。ついさっきまで捨て猫だったとは思えない、この世の悪意になどふれたこともないという無心な瞳で、俺のくしゃくしゃになった情けない顔を見つめてくる。
「タマミ…!おまえ、俺を慰めてくれてんのかー!?」
もうじき二十歳にもなる男が、小汚いワンルームで猫を抱きしめてぼろぼろ泣く姿なんて、絶対、誰にも見せられない!と思った。