一樹、君とは幼馴染みだったね

私達がまだ園児の時
家が隣同士で親同士の仲がよくて
将来私達が結婚したら本当の家族になれるよ!

そう言われて
いつか ぜったいに けっこんしよう!
って言ったの
忘れたかな?




小学生になって
世界が広がると私達は少し距離が開いたよね

実はあの時
私は一樹のこと好きだったんだよ


でも、そういう話に敏感な時期だったから
からかわれるのが恥ずかしくて
私はただ誰にも見つからないように
一樹の横顔ばかり盗み見てた




中学生になると
私はもう自分の気持ちの扱い方を分かっていて
一樹と距離が近くても
実は心臓がドキドキしてても
何てことないような顔をしていた私だけど
そんな私にドギマギする一樹を見るのを
ひっそり楽しんでたんだ




高校生になると
私達は初めて離ればなれになったよね
私は東京の女子高に
一樹は地元の共学に

不安だった
距離が離れたら
私達の心も遠くなってしまうような気がして

そんな私に一樹は制服のボタンをくれたよね
御守りだって
第2ボタンじゃねーかんな
勘違いするなよって

嬉しかった
第2ボタンじゃなくても
たとえそれが道端で拾っただけの
ごみたいなボタンだったとしても
このボタンがあれば大丈夫だって

高校生活
友達もできた
一樹も会いに来てくれる
私も会いに行く

幸せだった
当たり前だと
この生活が続くと信じてた


でも、そんなことはなかった


すっごく驚いたよ
だって、結婚してないのに
一樹が家族になったから。


あの日は雨が降っていたね
テスト前で一人家に居たんだ
そう言っていたっけ

君の両親を
叔父さんと叔母さんに
二度と会えなくなる日がくるとは
誰も思わなかったから。


ふさぎこんで何も喋らない一樹を
私達家族がどれだけ心配したか分かる?
返事を返さない一樹に
繰り返し繰り返しかけた言葉を
一言でも一樹は覚えてる?