「よいしょっと」


椅子から腰を上げ足をしのばせ近寄ってみる。寝ている人が、もしかして先生の伝言聞いてたりするかも?


「・・・すいませ〜〜ん…」


カーテン越し、とりあえず小声で。遠慮がちにたずねてみたけど、変わらず物音ひとつ聞こえない。息を殺しつつ音を立てずに、そろりと中をのぞいてみた。


あ。


杉本だ。そういや教室にいなかった。

どうやら熟睡している様子。少し右に傾けている顔がピクリとも動かない。


「…杉本?——寝てる…??」


やっぱり超小声。寝てる人間には返事ができないはずだけれど、もう少し近づいて声をかけてみる。

一定のリズムを奏でる小さな寝息は、乱れる様子もない。


「そのまま起きないでくださいね」


大胆にもひょっこり顔を覗きこんでみる。

さっき美耶と話した後だし好奇心とか興味があった。どれどれとばかりに、じっくり間近で杉本を観察してみることに。

ふむふむ、なるほど。
モテるのがわかる気がする。

今朝の出来事が嘘のように、まるで子供のような寝顔をしてはいるけれど、とても目鼻立ちが整っていて清潔感がある顔のように思う。

鼻高いなぁ〜・・、睫毛も長いし。

アゴのラインもスッキリしているし、肌もきめ細かくて、髪の毛は清潔感たっぷりサラサラのストレートだ。横顔もすごくキレイな顔している。


「ま、性格は最悪だけど」


思わず声に出してしまい、焦って口を押さえ息を殺した。


「……」


ふ、ふぅ……、焦ったじゃん。

起きたらどうしようかと思ったけれど、相変わらず寝息は一定リズム。大袈裟なようだけど寿命が縮まった気がした。

しかしこんなことをしている場合ではない。だけど、どうしよう。

先生はまだ帰ってこない。杉本は寝ている。あたしは胃薬がほしい。

壁の時計をもう一度確認してから、軽くため息をついた。


「遅いなー」


そしてカーテンに手をかけ、そこから出て行こうとしたとき———