「最近、元気がないのってそのせい?」


元気がない?


「えぇ!?」

「なに!」

「あたし? 元気ない!?」


自分でも驚くほど大きな声で反応してしまう。その証拠に中嶋くんも、あたしの声の大きさに驚いていた。


「最近ずっと元気なかったけど」


あの夕焼けをふたりで見る日まで、杉本がいないのは当たり前だった。

それに今は夏休み。杉本に会えない日が当然だと思っているはずの、あたしに対して中嶋くんは“最近元気がない”という。

普段どおり、生活していると思っているのに。


「…そうかな?」


曖昧な返事で、その答えを濁してしまう。自分でもわからないのだから当然だ。


「違うならいいや、俺の勘違いかも」


そう言った中嶋くんは「今日も暑いね」と手をヒラヒラさせた。


「そーだね」


いろいろ考え事をしたせいか上の空のまま適当に相槌を打ってしまう。返事をしたあとで、今日は昨日よりは過ごしやすい日だったことに気付いた。

なんだかな。

だけど中嶋くんと一緒に歩く街。あたしがひとりで歩く街や、杉本と歩く街と同じ街並みなのに、そのどれも違う気がする。


「カキ氷が食べたい」

「……へ?」


またぼんやりとしてしまっていた。