「同じクラスの杉本だよね?」

「そこ邪魔」


は。そんな怪訝に眉寄せられるほど邪魔なところには立ってないはずですが。

杉本は呆然とするあたしをチラリと見ただけで傘を畳みだした。


「さ、先に謝ってよ!」

「ひでえ、ブス面だな」


まったく会話になってないのですが。

それもそれだけど親しくもないクラスの男子にまで、こんなこと言われてるだなんて。冗談と笑い飛ばせないのがムカつく。雨を嫌いな理由が、またひとつ増えそうだ。

ムカムカムカ。


「マコォ〜、おはよーん」


教室へ着くと一番に声をかけてきたのは、あたしのことをマコと呼ぶ美耶。

あたしの名前は辻 真琴(つじまこと)。マコトと呼ばれるのが嫌で友だちにはマコと呼んでもらっている。


「おはよぉ…。なんか相変わらず元気だね」

「なんかマコ顔に縦線入ってるよ」


そういって楽しそうに笑う美耶。栗色の髪の毛はまっすぐ綺麗なロングでクリクリ大きな目。手足も細くて長いマネキン体形だ。いつも男子生徒の注目を浴びているような女の子。

そして、ふと咲の姿が視界に入る。あっちにも新しい友だちができたようで談笑していた。――なんだかな。

なにを言い訳されたとしても腹が立つことには変りはないのだし、遼汰が帰ってくる訳でもない。それなら喋らないほうが楽でいい。だけどあたしと咲は姉妹のように仲が良かった。

だから別に憎んでるとか恨んでるとかはない。と思う。なんかよくわからない。

大好きな咲が、あたしより遼汰を選んだ。
大好きな遼汰は、あたしより咲を選んだ。
あたしは選ばれなかった。
ただそれだけのコト。