「千草のこと好きなの?」
「突然なに」
「チョコ受け取ったんでしょ? ほかの子からのは断ってたじゃん」
あ、なんかちくちく言葉だ。
口に出したあと、ちょっと後悔。
「あー…、なんか面倒くさいから答えたくない」
「なにそれ。千草のこと傷つけたら許さないよ?」
「はいはい」
「ほんとにわかってる?」
「うるさいなー。いくぞ」
「わかってないでしょ?」
「はいはい、うざい」
「なにそれ」
「わかってるって」
またあちらの世界へと戻る。この扉一枚の隔たりだけなのに、がらりと世界が変ってしまう。
戻ると戻るで楽しいのだけれど、このときが一番気の重くなる瞬間だ。
そしてあたしたちの穏やかな時間が終わる。
「じゃあな」
「うん、じゃあね」
屋上から出て階段を降りれば、すぐあたしたちは別れなければならない。
杉本の教室はあたしの教室と反対で、向かい側の校舎にあるので渡り廊下を渡って教室へと戻る。
