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少しの肌寒さは残るものの、暖かい日差しが溢れ光が束になって注ぐ季節。

それに負けないぐらい眩しく輝く新入生。桜も満開だ。

もうあたしも先輩である。

あたし自身、まだその実感や自覚がないとはいえ、真新しい制服に身を包む初々しい新入生達を見れば、どこか懐かしく思える。

とはいえ春休みも語れることはなにもない。青春とはなんだろう。


「マコ先輩〜〜」


ぶりっこ奈美だ。
杉本は家庭教師をクビにはならなかった。

それもそのはずで奈美と杉本は家族ぐるみの関係らしい。本当は杉本のお兄ちゃんが家庭教師をするはずだったとか。

だけどこのぶりっこ奈美がシンちゃんがいいと言ったそうだ。あぁ…。ぶりっこは余計か。


「これからもぉ、よろしくお願いしますぅ」

「はいはい。合格おめでとー」


あたしたちは親しく話す関係でもない。なのになぜかカウントダウンのあとから、会うとこんな感じの奈美。

会うといっても偶然見かける程度なのに、こんなふうにわざわざ声を掛けてくる。ちょっと意味が分からない。

しばらく相手をしていたけれど、それにもだんだん飽きてきので適当にあしらった。


「もお〜〜。マコ先輩の意地悪ぅーー」

「……つかれる」


ってか、あたし。
こういうぶりぶりしたタイプの子は元々苦手だし。