この声は…とおもい、私は恐る恐る振り返る。

「…あ、笹倉くん…?」


なぜ帰宅部の彼がここに?
漠然とした疑問が頭をよぎった。

「…あの、なんで笹倉くんがこの時間にいるの?忘れ物?」

「…うーん、そんなところかな…
小鳥遊さんこそこんな時間まで残って、どうしたの?」
笹倉くんは私に近づいてきた。
気のせいなのかな…
距離が近い。

「…うーん、ちょっと色々あってね、こんな時間になったんだ。」
説明するのも面倒だからこういうのでいいだろう。

「…ふーん…そんじゃあさ、俺送るよ。」
「……え!?どうしてそうなった?」
今の話の流れからして急すぎだし、確実にやばい!!
これで送ってもらえば…確実に……
「…そうか?別にいいじゃねえかよ。
で、どうする?」
「…ご遠慮させていただくよ…気持ちだけ受け取っておくね、ありがとう!」
私はそう言ってそそくさと彼の元を離れようとした。
…しかし、すぐに追いつかれて手首を掴まれてしまい、足止めをくらう。

「…??ど、どしたのかな?」
なんかやな予感がする。
「…駅までは一緒に帰ろう……?
小鳥遊さん顔が硬いよ?大丈夫?」

そう言った笹倉くんが、私に向き直るなりどんどん近づくから私の体には寒気が走った。

「…っ!?だ、大丈夫です!!!!!!」
はっとした私は素早く彼から離れる。

「…?ほんとに?…ま、なんかあったら言ってね!」
笹倉くんはニッコリと笑う。
(……顔が硬いのはお前のせいだよ!)
私はそう心の中で叫び、彼の強引さに観念して後をついていく。

そうして駅についたが、何故か、彼は離れない。
「…あの、笹倉くんはどこで降りるの?」
「…え?送るっていっただろ?」
平然と言いやがった!
そんなこと許してないし!!
「…駅までのはずだったよね?
それに、笹倉くんにも申し訳ないし」
「大丈夫だよ!」
こっちが大丈夫じゃない!
私は顔から血の気が引いていくような気分に陥る。
「…おい、お前、こいつ嫌がってんぞ?」
笹倉くんではない誰かの声、

「…誰ですか?俺らと関係ないでしょ。」
と、笹倉くんはムキになる。

「…あ!」
その人は、パーカー先輩だった…
「…関係なくてもさ、お前、明らかにその女に嫌がられてるし…その事実を伝えただけ、」
あくまでもけだるそうに言ってるが…たすけてくれているのだろうか。

「……何様だよ!」そう言って笹倉くんは先輩に突っかかる。
「…え?」
私は意味がわからず棒立ち。
笹倉くんは今までにないくらい怖い顔をしていて私は驚いた、裏ではこんなやつなのか…
その時、笹倉くんは舌打ちをして去っていった。

私はこのパーカー先輩のことが尚更わからなくなる。
「…お前も災難だな…ま、俺に頭突きしたバツだろうがな!」
そうしてまたニヤニヤ、
ほんとに優しいんだか、意地悪なんだかつくづくわからなくなる。
「…はぁー。」
私はつい、深いため息をついた。