それから一週間後…

私は毎日玲弥先輩のお見舞いに行っている。

看護師さんとも知り合いになり、仲良くさせてもらってる。

「…こんにちはぁ!
…玲弥先輩、体調はどうですか?」

「…お前、また来てくれたのか?
毎日来るの、大変じゃねえのか?」

「安心してください!
私の帰り道の途中ですから!…それにあのコタロウとかいうバカも捕まって安全になりましたし!」

「…そうだけどな…
今日は親父が来るんだよ…」

「そうなんですか!…で、どうして玲弥先輩は嫌そうなんですか?」

「…親父がお前を見たら…多分、大騒ぎするから…」

「…私は全っ然いいですよ?」

「…俺が良くないんだよ…」

玲弥先輩がぶすくれた…ということは。

(…あ、照れてる!)

最近、玲弥先輩の性格は格段と柔らかくなってきている。

「…玲弥先輩が良くないことってなんですか?」

玲弥先輩が照れてるのは可愛いけど、それはさておき私はその理由が知りたい。

「…それは…親父に彼女といるの見られんのはなんか、照れくさいし…」

「…私は玲弥先輩のお父さん見てみたいです!」

玲弥先輩のお父さん…となればとてもいい人なんだろうとは思う。

「…ま、いいや…いずれ会うことになりそうだしな…。」

玲弥先輩のレアな笑顔…
あの事件以降よく私に見せてくれるようになってとても嬉しい。


ちょうどその時…

「おーい、玲弥!俺だぞ!」


「…あ、親父がきた。」

とても豪快で大きな声のガタイのいい人が入ってきた。

この人が玲弥先輩のお父さんらしい。
隣には玲弥先輩のお母さん。

すごく綺麗な人で、玲弥先輩はお母さん似だと思った。

「…あ、君は玲弥のお友達かな?」

「…は、はい!先日は玲弥先輩のおかげで助かりました!…小鳥遊春馬です!」


「…あら、可愛いお嬢さんね!」

玲弥先輩のお母さんは私を見てにこやかにそういった。

「…お前の彼女か?…やるなぁ玲弥!」

小声になってない小声で、玲弥先輩のお父さんは先輩に耳打ちをしてる。

「…っ!?あのなぁ…親父…声が大きい。」

「別にいいだろ?…で、実際はどうなんだよ?」

玲弥先輩のお父さんは玲弥先輩とは真反対の元気な…いや、元気すぎる性格らしい。

「…だから…」
玲弥先輩は照れくさくてお父さんに私の事をいいたくないらしい。

二人はワイワイしてるうちに私と玲弥先輩のお母さんはふわふわとした世間話に花を咲かせる。

「…春馬ちゃんって、玲弥とは同い年なの?」

「いえ、一つ下です!
…奥さんはお綺麗ですね!」

私はいざ玲弥先輩の両親とご対面すると、緊張しちゃってあたふたしてしまう。


(…あ、今日はお母さんも来るんだった!!)



「…あら、そう?
ありがとうね!春馬ちゃん!」

そんな感じでふわふわとした奥さんでとてもいい人だった。

「…あ、今日はうちの母もお見舞いに来るんですけど…大丈夫ですか?」

「…全っ然大丈夫よ?むしろ来てほしいくらい!楽しみだわ!」

そして十分ほどたってりんごなどを食べながら私の母を待っていた。


「…あ、お母さんだ!」

私の携帯が鳴り、お母さんの電話番号が表示された。

「…ちょっと失礼します。」

そう言って母の電話に出る。

「…ねぇ、病室どこ?春馬…私、今ロビーにいるから来てくれる?」

方向音痴な母を迎えにいって玲弥先輩のご両親のことを話した。

「…え?…あたし全っ然心の準備できてない!…もう少し早めに言って欲しかったー!」

お母さんは驚いたみたいだけど大丈夫だったみたいだ。

「…お待たせしました!」

「…あ。薫さん?…薫さんよね!?」

私の母を見て玲弥先輩のお母さんが驚きの声を上げた。

「…あら!こんなことあるの!?」

「…???」

私と玲弥先輩は意味がわからずポカンとして顔を見合わた。

「…それじゃあ、このお嬢さんは…あのはる坊!?…男の子かと思ってた!」

はる坊…昔まだお父さんがいた頃のあだ名?…ってことは!?

「…えっ?……玲弥先輩って…あの…」

「…春馬は……あの春馬なのか?」

こんなことありえないと思ってた…けど

玲弥先輩がまさかの昔よく遊んでくれてたお兄ちゃんだとは思わなかった…

「…なんで?…苗字が小鳥遊なのに…?」


「…あぁ、それはだな…」

玲弥先輩が聞いた質問に答えたのは玲弥先輩のお父さんで、

私のお父さんが死んじゃっても私たち家族は危ないので…
母の旧姓に戻したという真実を話した。

(…まさかとは思ってたけど…ほんとに玲弥先輩があのお兄ちゃんだなんて!)

「…はは、マジかよ。
お前があの春馬とはな!」

「…私もあの優しかったお兄ちゃんがツンデレに進化してるとは思いませんでした!」

「…なんだよ、ツンデレって!
俺は普通だ!…てか、春馬、お前は天然だよ!」

「…私は普通です!
……でも、よかった…今頃どうしてるか気になってたんですよ。」


「…俺もだ。」


私の母が現れてから病室の空気はさらに明るくなり。

私と玲弥先輩の胸に抱えてたモヤモヤも消えて大切な人との再会も出来た。

親達はみんな世間話をしにカフェに行ってしまい、今は2人きりの病室。


なんだかよくわからない照れくささが二人の間を包み込む。


(…だってぇ…まさかの幼なじみとは思わなかったからな…なんか、緊張しちゃう)




その時、急に腕を掴まれて玲弥先輩の顔が真ん前に来る。

「…ふぇ!…ど、どうしたんですか?」

「…間抜けな顔だな…
でも、そんなお前だからだろうな…昔っからほっとけないんだ。」

私は玲弥先輩の暑い視線に、顔から火が出そうになる。

「…ま、間抜けって…」

それでもマヌケは嫌だから否定…

(…できてないけど…。)

そして…
れあの手に力がこもると、またさらに引っ張られて玲弥先輩の口が耳元に来た。

「…もう、一生お前を離さねえからな。」

「…ッ!?……は、はい!」

夕方に病室で二人きり、秘密の約束を交わした。