…早く…早くしないと…

玲弥先輩が…危ない!

…お願いだから、間に合って!

今にも身体は倒れそうなほど限界だ…

それでも私は蓮先輩のあとを必死に追いかける。


「…君の負けだ。」

私たちのすぐしたから聞こえたのはこたなんちゃらの勝ち誇ったような声…

「……春馬…。」

よく聞こえないけど玲弥先輩の声がしてる…それに私の名前が聞こえた気がした…

「…このクソ野郎が、」

玲弥先輩の鋭く響く声がした。

「…はっ!…負け犬が…」

またあのこた…?の声がした…

「…ま、まて!この卑怯もんが!」

私はその言葉に玲弥先輩の危険を察知して駆け出した。

ここは2階…
普通に行けば間に合わない!

(…こうなれば…)

「…なっ!春馬ちゃん!!」

蓮先輩は驚き、私を引き留めようとしたが遅かった…


「…は?…グッ!…ど、して…」

虎太郎の余裕な表情は消え去り、彼の目は玲弥先輩でなく、私の顔を捉えてる。


「……は、春馬?」

玲弥先輩の驚いた声…

そりゃあ驚くよね…

私は、玲弥先輩が危ないと思い一かバチかそのまま2階から飛び降り、
虎太郎を蹴り倒してクッション代わりに着地したのだから…


「…この、バカ…」

「…なっ!命の恩人にそんな事言うなんてひどぃ!……へ?…」

私が玲弥先輩に言い返しかけたときに…
急に、目の前が真っ暗になるから一瞬何が起こったか分からなくなった…

(…えっとぉ、これって…)

「…無茶しやがって…怪我してないか?」

「…ッ!?せ、先輩!?あ、あの、こ、これって…。」

「…抱きしめて悪いかよ。
…てか、怪我してないかって聞いてんだけど。」

少し離れたと思えば玲弥先輩の顔が目の前に…!?

…鼻が触れそうなくらいに近い!

(…な、な、なんじゃこりゃ!)

顔が真っ赤になるわ、暑くてたまらんやら、はずかしさで、私の心臓はバクバクしてて今にも破裂しそうだ。

「…あ、だ、だだ、ダイジョブです!」

私は恥ずかしいあまり、カタコトな喋り方になってしまった。

「…ふっ…なら、よかった…」

玲弥先輩は柔らかく笑い、私の狭い肩に顔をうずめてきた。

「…えっ?ちょっ、れ、玲弥先輩!!」

「…わりぃ、もう、疲れた…」

そして、すー、すーっと大きな寝息を立て始めた玲弥先輩。

(…私は…どうすりゃいいの?)

ポカンとしてると、蓮先輩が来てくれて玲弥先輩をのけてくれた。

そして…

「…玲弥先輩!!…お腹刺されてる!」

私はやっと今、気づいた玲弥先輩のお腹の傷を見てそそくさと携帯で救急車を呼んだ!

「…玲弥先輩…」

どうしよ…あたしのせいだ。

私が捕まってしまったから…
玲弥先輩があんな大怪我を…

救急車が来て私と蓮先輩が一緒に乗り込む。

病院に着くと、蓮先輩は喧嘩での怪我を、私はガラスで切った手のひらや、くじいた足首、などを見てもらい…

玲弥先輩は、お腹の傷の治療をしてもらっていた…

玲弥先輩は無理をしてたようで、出血も多いかったからまだまだ時間もかかるようだ。

「…玲弥先輩…ごめんなさい。
私のせいだ。…また、私は…人を傷つけた。」

(…お願い!!神様……どうか、玲弥先輩が無事でありますように!)

私は…病院で玲弥先輩の無事を必死に祈り続けた。

(…玲弥先輩…!!)

どれくらいの時間がたっただろうか?

手術室のドアが開く…

「…あ。」

蓮先輩と私、そして私の母と玲弥先輩のお父さんや組の人たちなどとたくさんの人に緊張が走る。

そして医者が出てきて口を開く…

「…玲弥くんは…」