とうとう喧嘩が始まったようでドアの外は騒がしい。

私は腕のロープをほどこうと頑張っているけどびくともしない。

…何かないかと周りを見る。

あたり1面ダンボール箱…

外側にあるガラス窓は割れている…


床に割れた破片もあってとても危ない。


このまま何も出来ないのはもどかしくて嫌だ。

…何か尖ったものは…ナイフがわりにできるやつ。

……そうか!

…ガラスの破片でどうにかロープが切れるかも…

…最初に気づけばよかったのに!

そうと決まれば有言実行だ。

さっそく床のガラスを拾うとどうにかこうにか手に持ってロープを切ってみる。

…痛い、ガラスでロープを切るのは力がいるみたいで手のひらにチクリと痛みが走る。

…でも、こんなことでヘタくれてたら、玲弥先輩達が大怪我しちゃうかもしれないのだからこんなのは我慢しないと。

「…あ、切れた!」

ガラスを持っていた手はじくじくと暑く熱を持った痛みが広がる。

「…っ!…とりあえず、ハンカチで…」

ポケットのハンカチで応急処置だけして恐る恐るドアの外へ出ていくと…

やはり、玲弥先輩達の方にみんな行っていて、私の見張りは誰ひとりとしていな…!?

…見張りは…ドアのすぐ隣にいた。

「…おい、お嬢ちゃん、抜け出して何するつもりかな?」

スキンヘッドのいかにもな感じの人がニヤリと笑い私の方に詰め寄ってきた…

「…あ、っと、お手洗い!
…て、何処ですか?」

…緊張で冷や汗が背中を伝う。

「…それ、嘘だろ?
…顔に出てるからわかりやすい。」

そして私にスキンヘッドの手が伸びてきた。

「…やっぱダメだ。」
誤魔化せないな…

そして私は伸びてきた腕を取り、思い切り自分に引き寄せて…

「…痛!…この野郎…。」

…思い切り頭突きをお見舞いしてやった。

スキンヘッドさんがひるんだスキに私は走り出した。

私の頭もズキズキするけどせっかく作ったチャンスだもん…逃げないと

私はバタバタ逃げて物陰に隠れる。

「…どこいった!…あのヤロー絶対ただじゃおかねえ。」

スキンヘッドさんが私をどこかへ探しに行ったのを見届けてから、照明のスイッチのありそうなとこを探すためにとりあえず2階に上がる。


この時も音は立てないように…
だけど急ぎめに。


多分事務の部屋みたいなとこにありそうなんだけどな…。


2階の部屋をとことん探してみる。

一番奥は何もなくてその次のドアノブに手を掛けた時、ふと見るとスキンヘッドさんが階段を登り始めてた!

「…やばい!」
とりあえずその部屋に音を立てずに入ると、真っ暗だけど…

私は手を振り回して隠れるものを探す。


…ガツン!!!

手を思い切りぶつけてしまった…!

(…ほんとに今度こそ、やばい!)

結構大きな音が響いたから
スキンヘッドはここに絶対来る。

とにかく今ぶつけたものを手で調べたら隠れられそうだ…
形はおそらくロッカー。

バタバタそれに隠れると、丁度スキンヘッドが入ってきた。

(…あっぶな!)


私は必死に息を殺して気配を隠す。

不幸中の幸いか、下が騒がしいおかげで私の呼吸とかは聞こえてないはずだ。

そしてしばらくしてから、スキンヘッドが私の隣のロッカーを開けた!


(…どうしよ…バレる…!!)

「…チッ、ここもダメか…」

そう愚痴を言うと幸いな事にスキンヘッドさんが去っていった…。


スキンヘッドさんは多分、私と同様に手の感覚だけでロッカーを見つけたから1個だけだと思い、そのままさったのだろう…


(…事実、私もこのロッカーを見つけたのは手の感覚のみだった。)
ぶつけた手がじんじんする。


そして私がその部屋から出ようとした時だ。

…奥から足音が近づいてきた。


(…またスキンヘッド!?)

スキンヘッドは2階を探し終えて戻って行く途中らしい…

私は部屋の中でまた息を殺して気配を消す。


「…はぁ、」

やがてその足音も離れて行って私は安堵のため息をついた。

「…よし、行くぞ。」

私はまたすぐに気合いを入れて電気のスイッチを探し始めた。

この間にも玲弥先輩達は私のこと助けようと頑張ってくれてるんだ。


とにかく…
先輩達も驚くだろうけど、電気を消すのが一番だと思うから…急ごう。


そうして私は奥へと進んでいった。