…暑い。
ずっと水分をとってないからか、とても気分が悪い。

手はほどけないし、体力だけが奪われていく…

玲弥先輩に迷惑はかけたくないと思っていたのにこんなおおきなめいわくをかけてしまうとは…
しかもケガなんてされたらどうしよう。

それでも私の力は微々たるもので、こんなロープも解くことも出来ない…

うなだれたのもつかの間、
騒がしかった倉庫が急に静かになる。

「…??」

どうにかして膝立ちになって丁度顔くらいの窓を覗く。

薄暗いけど…あの2人は…!!

「…れ、玲弥先輩!?…蓮先輩まで!」

私はおどろきのあまりあ大声を出した。

二人が来てくれたことももちろんだけど…何よりも、
私を拉致したヤツらは15人ほど、
玲弥先輩達はたったの2人だ。

あれじゃ怪我するのは絶対だ。
…私の中で昔の光景がよぎる。

殺されはしなくても、昔に目の前で倒れた父みたいになって欲しくない。


「…春馬?…その声は、春馬だろ?
おい、どこにやったんだ。」

私の声に反応して玲弥先輩はリーダー野郎に詰め寄る。

今までに一度も見たことのない顔と声…

私の心は不安で埋め尽くされていく。

「…教えない。…どうしてもってんなら力づくで取り返すんだな。」

リーダーは玲弥先輩を挑発するように笑う。

(…玲弥先輩…)

「…後悔してもしらねえからな。」

玲弥先輩の低い声が薄暗い倉庫に響き渡る。

(…やばい、早く出なきゃ!)

玲弥先輩達はたったの2人だ
いくら強いとしても限界があるはずだ、
私が出来ることは…

そう考えた頃にはもう私の中の不安は消えていた。

私は私に出来ることをする。

むかし私と母を守ろうとしていなくなった父のように、誰かの犠牲の上での幸せなんて…

もう2度と嫌だから…