暗い…

私が目を覚ますとそこは暗い所だった…

「……なに?ここ。」

「…目ぇ覚めたのか。」

…少し肌寒い。


パッと電気がつく。

…どこかの倉庫だろうか?

そして…私は目の前の光景を見て寒気がした。

…ヤンキーがたくさんいる。

金髪やら変な剃りこみしてる人。

スキンヘッド…ピアス…ガタイのいい強面の人。

冷や汗が一気に吹き出てきた。

「…なんだ、よく見ると可愛い嬢ちゃんじゃないか。」

リーダーっぽい人が近づいてきて私の顔を見つめてくる。

鼻もつきそうなくらい近くで…
そして、ニヤリと怪しく笑う。


「…なっ…なんですか。
…あなた達は」

「…?知らねえの?…俺ら結構名は知れてんだけど?」

「…知りません。…教えてください。
…てか、教える前にこのロープほどいてくださいませんかね?」

私は怪しい笑顔を崩さない彼に挑むような目で訴える。

「…えらく肝の座ったお嬢さんだ。残念だけどロープはほどけないな君の大好きな玲弥君がくるまではね…」

「…?なんで玲弥先輩なんですか?
それと、私は玲弥先輩の後輩でそう言うのじゃないですから…勘違いしてます」


どうやら私は餌にされてしまったらしく、玲弥先輩がくるではどうにもならないらしい。

(…どうしよ。玲弥先輩に迷惑かけた。)


「…まあ、勘違いでも、玲弥君は絶対に助けに来るね…」

彼はより怪しく笑う。


「…それに、安全に返すつもりもない。」

「…っ!?
それって…」

「…アハハハ!…ま、どうなるか、そこで見てなよ。君の可愛い顔が悲しみで歪むのが…楽しみだね。」

鼻頭に指を突きつけてきた。

(…この野郎!)

無性に腹が立つ。

「…痛てぇ!!…何すんだよ!」

攻めてもの仕返しに彼の指を噛んだ。

一瞬だし、効果は少ないけど、このままなのも納得いかないから…

「…この騒ぎが終わったら…覚えとけよ」

彼はそう言って恐ろしい顔をした。

「…。」

私はそれでもひるまずに彼に挑むような視線を向け続けた。

「…ふん、」

彼は鼻で笑うと戻って行った。

そのまま私は何処か薄暗い部屋に入れられた。

「…玲弥先輩」

こんなことは前にもあった…

まだ小さくて記憶は曖昧だけど…

お父さんがいなくなってしまった…それだけは覚えてる。

母は私のことを心配してるに違いない。

あのお兄さんは元気にしてるかな…?

なんだか玲弥先輩に少し似てる気がしたけど…気のせいだと思う。

…また会いたい。

そう思うけど…

探してみた時もあったけど…
幼い記憶は曖昧で、お兄さんを見つけることはできなかった。

名前も小鳥遊に変えたから向こうも気づくこともないだろうし…

「…玲弥先輩、だったりするのかな…?
そうなら嬉しかったりするのに。」


こんな時に呑気なものだが…

ほんとは怖くてたまらない。
早く玲弥先輩に会いたい…けど。

そもそも助けに来てくれるのかもわからない…

泣きたくなるけど…あのリーダー野郎に負けるみたいで嫌だ。

…だから泣かない。


それに、今は玲弥先輩を信じるしかないし玲弥先輩に迷惑かけたくないし…


とりあえずロープを取るように頑張ってみよう。

そうして私はモソモソとロープをとる作業に取り掛かるのだった…