そんなこんなで一日が終わりかけた夕暮れ時。

私は花壇の野菜たちの手入れや、学校の先生方ひも梅ジュースの差し入れなどをしていたので今日はクタクタだった。

「…おまえは何かといつもいそがしそうだよな?…疲れてねえの?」

「…いや、疲れるに決まってるじゃないですか!?」

「…でも、不思議なくらいずっとたのしそうだからな…」

「…どういう意味ですか?」

今の玲弥先輩の物言いは嫌味にしか聞こえない。

「…ほめてるんだ。」

「…??」

私はさらに意味のわからない発言に首を傾げる。

「…だから!…疲れてんのを顔にださねぇのがすごいって言ってんだ。」

玲弥先輩はムスッとして言った。
(多分照れている)


なんだか玲弥先輩がとても可愛く見えてきて、私は心がくすぐったくて、笑いがこみ上げてきた。


「…アハハ!玲弥先輩ほっぺたがすごく赤いですよ?…アハハハ!」

「…な!…わ、笑うな!」
そう言って玲弥先輩がさらに赤くなっていく。


「…だって!…アハハ!」

「…笑いすぎだ。」

そう言って玲弥先輩は顔から耳まで真っ赤にさせながら近づいてきた。

「…アハハ!…ふぅ、笑い疲れた」

私が息をついた頃には玲弥先輩がすぐ目の前にいた…

「…お前な…そんなに無防備に笑ってるから色んな男がよってくるんじゃないのか?」

玲弥先輩は赤くなった頬が少し戻っていた。


「…??私はそんなに男を寄せ付けてません!…玲弥先輩、急にどうして…??」

「……心配、なんだよ…お前って素直すぎるし、すぐ人を信頼すんだろ?…だから、あのストーカーじみたヤローみたいのが、たくさんいそうで…。」

コレは多分、7月の…笹倉くんに家までついてこられそうになった事件のことなのだろう。

「…玲弥先輩、それは、心配してくれてるんですか?」

私は玲弥先輩に恐る恐る尋ねてみる。


その時の玲弥先輩は拗ねてるみたいな表情をしていて、私は笑いすぎで玲弥先輩を怒らせたのかと思ってた…けど、どうなのだろうか?


「…そうじゃないならなんなんだよ?」

「…いや、笑い過ぎて怒ったのかと思いました。」

私はほっとして笑顔になる。

「…だから、お前な…そんなに笑顔振りまくな…」

「…?どうしてですか?…私って変な顔してますかね?」

「そんなことは言ってないだろ!……だから、お前が…可愛いから、そんな無防備に笑顔振りまかれると……俺が困んだよ。」

玲弥先輩が究極に赤くなってそう言って私を見つめてくる。

今までにない表情…
玲弥先輩の視線が夏の夕日の様に熱くて


私はなんだか恥ずかしい気分になる。
胸がドキドキしてくる…なんだか苦しいし…?

…なんだろう…これ?

私の中で明確な気持ちが芽生え始めている…それだけは確かで…

でも、それを認めてしまうのもなんだか嫌だ…

別に玲弥先輩が嫌いなわけじゃないけど認めてしまえば今までみたいにいられなくなるから…今のこの気持ちを認めたくない…。


「……あ!!!!そういえば私、急ぎの用事があったんです!…なんで、お先に失礼致します!」

私はこの空気に居続けることが耐えられなくなってバレバレの嘘を言って自分のバックを持って走り出してしまった。