着々と進んでいく結婚準備はわたしにとっては忌々しく、家人にとっては待ち遠しいものなのだろう。わたしは何もしていないのにこういうところだけは早いんだから。そんなにもはやく出て行ってほしいのか。まぁ過去を考えてみれば今更この程度なんとも思わないけどね!
それよりも現在、余程気になることに直面しているのだが。コンコン、と小さく窓が叩かれる音がする。部屋の扉ではなく窓である。ちなみにわたしの部屋2階だ。はじめは何事かと身構えたけど数日で慣れた。
すでに寝る準備はできておりそのまま出るのはさすがに恥ずかしいので上からガウンを羽織りカーテンを開けるとうっすらとした光でもわかる美貌をした人がニッコリと笑って手を振っていた。
毎回思うがここの警備はどうなっているんだ…わたしのときは簡単に捕まったのにこの人がここに来れるって謎なんだけど。
「こんばんは、お嬢さん」
「……どうも」
そこには木の枝に座ってこちらを見ているあの日の男性がいた。
……なぜこんなことになっているのかわたしが一番知りたい。だってたかだか数分話していただけなのにその次の夜に人目を忍んで来るとか一体何が目的なんだと疑うのも仕方ないと思うんだけど。
だからといって明らかに不法侵入しているこの人のことを誰かに言うとかできないし!相談できないから自分で考えるしかできないし!…まぁこの場所で相談できる人もいないんだけど!


