何を思ったのかそれからもあんなところに行った、こんなところに行ったと自分が旅したところの話をしてくれるこの人の話に聞き入る。わたしが知らない広い外の世界を話してくれる人は初めてだった。
わたしはずっと籠の中の鳥で、広い世界を夢見るだけで本当の外の世界を知っているわけではないから。実際に垣間見てもほんの少しの時間だったしね。
「いいなぁ……わたしも旅してみたい」
「んー、でもすっごい大変だよ?お金なくなるとひもじい思いするし野宿もしなきゃいけないし。物取りだって結構な頻度で出会うしねぇ」
「そうなの」
そうそう、と軽く頷くけど、実際は話よりも本当に大変なのだろう。世間知らずなわたしでもそれくらいはちゃんと理解している。想像はつかないかもだけど。
あぁ、それでも、
「わたしは閉じ込められて一生を飼い殺しにされるより、自分で選択できる自由な空の下で死にたい…」
ここはひもじい思いをすることはないしあたたかな食事も布団も、体を冷やさないための衣服もあるし物取りなんて現れない。もし出てもわたし以外の人がどうにかしてくれる。
でもその代わりにわたしの意思も願いもささやかな望みすら握りつぶされてしまう。さながら人に飼われているただの家畜だ。今生かされていても最終的には食い散らかされる未来が見える。そんな風な環境でどうして満足できようか。
わたしが欲しいものはたった1つだけなのに…


